オタチのチタオ

ワイオタチ 昨日の夜は ソーナンス

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が数年振りにラブライブ!への熱を再燃させた話

少し昔話をしたい。

 

私は2013年に放送されたアニメ ラブライブ!1期でこのコンテンツを知り追い始めた人間だ。

あまりアニメを観ない自分がなぜこの作品を観ようと思ったのかはもう今となっては思い出せないが、「原作が漫画でもラノベでも無いが、どうやら前から展開されてたらしい謎の作品」という事でとりあえず録画だけしておくか位の気持ちだったような気もする。

多くの視聴者と同じように1話のススメ→トゥモロウで「は?」となり2話のスタダからの真姫ちゃんで今後の展開を楽しみにし、そして3話で落ちた。

 

衝撃的だった。

 

空っぽの講堂で「このまま誰も見向きもしてくれないかもしれない、応援なんて全然もらえないかもしれない」と言う穂乃果に震えたし、この3話が無かったらきっとこのコンテンツにハマっていなかっただろう。

スタダ発売日に即購入し鬼のようにリピートした。通学中に延々とループ再生した。頭がおかしくなる位聞いた。再生回数が4桁になった曲は後にも先にもスタダ(3人ver)だけだと思う。

そこから、このコンテンツを追い始めた。

アニメ1期2期、3rdライブ4thライブ、にこりんぱなにのぞえりラジオガーデン、ニコ生特番...雪崩のように押し寄せてくる供給を大学生の有り余る時間を使って片っ端から享受した。アニメBDもライブBDもサイリウムなんて物も初めて買ったし、映画館でライブを見るなんて行為も初めてだった。

そして5thライブ、自分の記憶が正しければたしかμ's活動休止論が初めて世に出たのが5thのパンフレットでは無かっただろうか。記事の端っこの方に小さく「次回の6thライブがラストライブ」と乗ってて凄く困惑した覚えがある。私のラブライブ!への熱はそれを境に消えつつあった。

その後aqoursの活動開始、劇場版、紅白出場、そしてfinalライブ...2015年を通して消え続けたモチベはfinalライブの頃にはもう随分小さくなっておりLVで参加するかも悩む程だった。(結果的には参加したし、行って良かったとも思っているが)

 

その一方で、aqoursaqoursとして割とあっさり受け入れる事が出来た。

μ'sへのモチベが減っていた事で、返って素直にaqoursを応援しようとなったのかもしれないし、また個人的にえみつんファイトクラブやらことほのまきやらの中の人のニコ生特番がかなり好きだったので、活動初期に鬼のような頻度で行っていた(イメージのある)浦の星女学院生放送をメインコンテンツとして楽しく享受出来たのも大きい気がする。

(モチベーションが消えていたことで、結果的に原理になる事無くaqoursを応援出来たというのも皮肉な物ではあるが...)

 

そして待望のアニメサンシャイン1期、これも凄く良かった。

8話では千歌ちゃんの「なのに0だったんだよ!悔しいじゃん!差が凄いあるとか、昔とは違うとか、そんなのどうでもいい!悔しい!やっぱり私…悔しいんだよ…」で私をラブライブ!に引き込んだ無印3話を彷彿とさせつつも、穂乃果の圧倒的主人公像とは違う「普通の人間」としての主人公像を見せてくれたり、11話では留学騒動とのIFとも言える展開や2年生の関係性など、無印を強く意識しつつも「これはaqoursの物語なんだな」と思えてとても楽しく観る事が出来た。

......まあ12話と13話は正直「これ11話が最終話で良くないか...?」と思ったりもしたが...

 

 

余談だがサンシャインはここが1番好き、PCの壁紙にしてたから結構思い入れがあったりする。

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が、アニメ1期が最終話を迎え丁度就活が始まった辺りでまたモチベーションが転げ落ちていく。

翌年の1stライブにはLVで参加した物の2期や劇場版は1度も観ることなく、2nd以降のライブ、「ジングルベルがとまらない」以降の新曲も追わずにこうしてコンテンツから離れる事となった。

 

 

と昔話をして来たが、結局の所私は「無印1期から入ってサンシャイン1期後から徐々にフェードアウトしていった」人間である。

 決してaqoursが嫌いな訳では無いし、アニメやライブに文句があった訳でも無い。ただなんとなく熱が消えてしまった、そんな感じだ。

 

そして、そんな私がアニメ虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会を期に、ラブライブ!というコンテンツへの熱を取り戻しつつある。(と言ってもサブスクで楽曲を聴き返したり、昔観ていたニコ生を見返したりしている程度だが)

 

 

 

という訳でここからが本題。

アニメ虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が無事に最終話を迎えたので、どうして再びこのコンテンツのアニメを観ようと思ったのか、どのような点が良かったのかを考えていこうと思う。

昔好きだった人間が再燃したという話なので、どうしても過去作と比較するような内容が多めになってしまうがその点はご了承頂きたい。

 

 

 

まず、無印・サンシャインのアニメとはどのようなものだっただろうか。

自分は「ツッコミ所や粗がある物の、ライブ感と勢いで押し切る作品」だと思っている。いわゆる加点評価だと点数が高くなる作品だ。

無印2期9話で突然雪中行軍始めたり、1期11話で突然ぶっ倒れたり、留学騒動も冷静に見れば留学直前にキャンセルするってなんだよってなるし「えぇ...(困惑)」となるものの、ススメBGMに穂乃果の「いつか、別の夢に向かうときが来るとしても・・・行かないで!」からの9人スタダでそういう細かい所は置いといて全部オッケーとなるパワーがある。

別にこれがダメという訳では無い。1期3話を始めこのアニメには自分をコンテンツに引き込む力強さが確かにあったし、そのような作品で無かったらアニメ終了後も追い続ける事は無かったと思う。

 

 ただ、これが1度離れた人間が再度観るとなると話が変わってくる。ライブ感と勢いの脚本を改めて冷静になって見返すと、なんだか物凄く恥ずかしくなるのだ。

 

では虹ヶ咲のアニメはどうだっただろうか。

自分は「10人それぞれが自分の問題に向き合い『この時このキャラクターならどうするか・何を考えるか』を台詞や演出で視聴者に提示する作品」だと感じた。

虹ヶ咲は1話~9話までが9人それぞれの個人回で、1話の中で各々が自分の問題と向き合い解決するオムニバス形式っぽい形を取っており、10話~13話でスクールアイドルフェスティバルというイベントを起点に侑と歩夢というこの作品のW主人公と呼べる二人の関係性の変化と成長を描いてきた。

それぞれが自分の問題と向き合い悩み、仲間やライバルの助けを借りてそれを解消したり受け入れたり共存したりしたわけだが、13話を通して常に「キャラクターが脚本の前」に置かれていたように思う。

2話で自分の求める「可愛い」を歩夢に押し付けてしまっている事に自分で気づくかすみ、5話でスクールアイドルに勧誘するよりも先に果林の「友達と食べ歩きをしたりして遊びたい」という願いを叶えるエマ、6話で皆に協力して貰いながらライブの準備をするが、それでも笑顔を出せない自分に絶望して部屋に籠ってしまう璃奈、9話でアウェイのステージに一人立つプレッシャーに飲まれて涙を流してしまう果林etcetc...

そのどれもが、「こういう話にしたいからこのキャラクターにはこういう事を言わせよう」ではなく、「この時このキャラクターならこういう事をするだろうから、こういう話にしよう」で描かれていたように思う。

そしてそれを20分というとても短い時間の中で台詞や表情背景や演出その全て駆使して視聴者に魅せてくれた作品だ。

 

7話でアルバイトをする彼方のシーン。冒頭のシーンでは綺麗に陳列されているトマトが、妹の遥がスクールアイドルを辞めると言った後のシーンではぐしゃぐしゃに陳列されており、遥が気がかりでアルバイトにも身が入らない彼方の心理状態が描写されている。

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無印サンシャインと虹ヶ咲の方向性は対照的とも言える物であり、どちらが良いかは個人の好みの問題だとは思うのだが、今の自分にとっては虹ヶ咲の丁寧な脚本・キャラクターの描き方の方が好感が持てた。

また、9人全員に個人回と新曲+MVというのも驚きだ。これまではOPED+MV付き挿入歌6曲がテンプレとなっていた訳だが、虹ヶ咲ではなんとOPED+MV付きソロ曲10曲+全体曲1曲という大盤振る舞いで関係者の方々には本当に頭が上がらない。MVの質の高さも驚きで、手書きとCGを並べてもこんなに違和感が無いものなのかと感動した。

シリーズでは恒例となっている中の人ネタや過去作のオマージュ、他媒体パロディに関しても「話の本筋やキャラクターの成り立ちには関与せず、分かる人には分かる、分からない人でも違和感無く話が進む」という大原則を当然の様に抑えており、本当に隙が見つからない。

話題となっていたキャラクターデザインの変更についても、個人的にはアニメサンシャインの扇型っぽくて(?)、線の濃い目があまり好みで無かったので肯定的だ。(サンシャインが扇型でアニガサキは台形っぽい...でなんとなく伝わるだろうか?自分は後者が好き。)ただここは本当に良い悪いでは無く好き嫌いの話なので、前の方が良かったという人間も当然居るとは思うが。

 

 

総評としては、シリーズ特有の大胆さや大味さ、ぶっ飛び具合を求めていた人には少し物足りない面があるかもしれないが、キャラクターそれぞれの抱える身近な問題を丁寧な心情描写と人間関係でMVという毎話設定されたゴールに持っていく作品であり、キャラクター・中の人・他媒体・過去作・新規視聴者層・既存視聴者層その全てに配慮された、月並みな表現をするなら「制作サイドの作品愛を感じる」良作だった。

 

自分と同じく「昔好きだったけど今は追ってないかな」という人や、コンテンツ自体に全く興味が無い人にラブライブ!という作品の一つとしてではなく、一アニメーション作品として観て貰いたいと胸を張って言える作品である。

 

 

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